重た~い本

 読書が趣味というわけではないが、頭の体操のつもりで、努めて本を読むよう心がけている。
 最近読んだ本の中で、私が記憶する限り、最も重たいと思った本がある。その本とは、「裂けた岬」ノンフィクション作家「合田一道」著、「ひかりごけ」事件の真相である。
表紙の書き出しを引用しよう。
 
「太平洋戦争中の1943年、日本陸軍所属の徴用船が、真冬の知床岬で難破。7名の乗組員のうち、生き残った船長と少年シゲの二人は、氷雪に閉ざされた飢餓地獄を体験する」
 
 私は北海道勤務を経験したとき、夏の知床を訪れたことがある。緑に包まれ波静かなオホーツク海に囲まれた夏の知床半島を観る限り、厳冬の知床半島を想像することは出来ない。しかし道東・道北の冬を体験してみると、厳冬の知床半島がいかに厳しいものであるか想像に難くない。

 その知床岬で、着るものもなく食べるものもない二人が、体感温度マイナス30度の寒さと飢えの極限に直面する。そして想像を絶する飢餓状態に追い込まれて、船長の人の道にそむく行為に繋がる。
この生き様を読むうち、どんどん気が重くなる。
仮に自分がこの船長と同じ境遇に追い込まれたら、果たしてどうするだろうか。
生きよう、生きなければならない・・・、心の底からそう叫びながら、でも食べるものはない。
考えるだけでも、息苦しくなる。
生への思いが強ければ強いほど、人は想像を絶する行動をするに違いない。

 そんなことを考えながら、この事件の大筋がつかめた頃には、読むのをやめようかと思うこともあったが、目を背けてはいけないことだと気を取り直して何日かに分けて読み終えた。

 この本に書かれている事件は、人の道にはずれた行為に違いないが、徴用船が難破して氷雪に閉ざされた知床岬で、飢餓の極限状態に追い込まれ、何とかして生き延びようとする人間の深層に触れる問題である。そしてその後その「罪」を背負って生き続ける苦悩が克明に綴れれていて、人の生き様をいろいろ考えさせられる本であった。
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by matutaka31 | 2008-10-04 23:06 | 思いのまま | Trackback | Comments(2)
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Commented by taminamikawa1 at 2008-10-05 16:19 x
小生も現役の頃、2年ほど札幌勤務/営業で網走等の道東等にも、
行きましたが、
知床は未踏です。

>氷雪に閉ざされた知床岬で、飢餓の極限状態に追い込まれ、何とかして生き延びようとする人間の行

このような行は太平洋戦争時/東南アジア等で食料のない
飢餓の極限状態と同じだったのではと思います。

生きるためには、やむを得ない行為だったのでは・・・・。
もし船長を小生に置き換えても、同じ・・・?
Commented by matutaka31 at 2008-10-05 22:52
taminamikawa1さん、お久しぶりです。
私も同じ飢餓の極限状態に置かれたとき、どうするだろうかと自問自答をして、本当に息苦しくなりました。そんなことは絶対しないと、誰が断言できるでしょうか。
 終戦前後の食糧難時代、代用食であっても3色食べられたときでさえ、あのひもじい思いは忘れられません。ましてや食べるものが全く無い極限状態を想像するだけで、戦慄を覚えます。


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