前回に続き旧唐津街道の馬出界隈探訪を続けよう。
「天井桟敷」の次に訪れたのが、国の有形文化財に登録されている
「お茶の箱嶋家住宅主屋」 明治時代に建てられた築約140年といわれる箱嶋住宅主屋が2007年12月に国の登録有形文化財(建造物)に登録されている。特別目立つ看板もないので、その存在を知らない人は気が付かず通り過ぎてしまうだろう。

中へ入ると、水琴窟の音が心地よく響いてくる。
主の箱嶋兄弟に笑顔で迎えられ、本業のお茶をご馳走になりながら、建物についての詳しい説明と「築200年を目指したい」との文化遺産を守る熱い思いを聞かせていただいた。

家屋は2階建てにしては低い造りになっているが、参勤交代の行列を見下ろすことのないよう、2階は納戸として造られたためだという。当時のしきたりを物語る貴重な遺産である。
むき出しになっている大きな梁から、夏の暑い日には松脂が滲み出ることもあるという。また弁柄で塗らた階段や欄干(手すり)は年を経ていい味を出していたこと等々、140年の歴史を感じる建物である。とは言え、老朽化が進み、シロアリの被害や7年前の福岡沖地震で家は傾くなど、あちこち損傷が目立つという。
修復には数百万円以上かかるらしいが、ギャラリー使用料とわすかなお茶の販売利益を当てながら、可能な限り保存していきたいとおっしゃる。
こんな貴重な文化遺産は是非残して欲しいものだ。
しかしながら、国は指定するだけで、その後の維持費等支援は一切無しということらしい。となると個人の責任で維持しなくてはならない。どう見ても理不尽な気がしてならない。
大切な文化遺産は、地域を含め国・県・そして市の支援で守る必要があるはずだ。その体制が整ってこそ文化財というものだろう。
一刻も早い地域ぐるみの支援策が生まれることを願って、次の「筥崎とろろ」へ向った。「筥崎とろろ」
チラシに「自分達で栽培した自然薯をお客様にご提供したい」という想いを抱き、始めた自家農園で栽培した自然薯を今年も収穫することが出来ました」と書いてあった。
この店も、余程気をつけて探さないと、見過ごしてしまうほどの古い建物で特別の看板もない。
ただ入り口に、年輪を感じさせる渋い暖簾がかかっていて、古ぼけた小さな立て看板があるだけ。
ほとんど予約のお客さんだけの様子で、我々が訪れたときも、予約で満席と書いてあった。
この店も、まさに「知る人ぞ知る」こだわりの店だ。
こだわりの料理は、自家農園産の自然薯はじめ野菜類をメインにして、とろろ、生とろろ、鮪ごま、むかごの小鉢に、黒毛和牛のすき焼き、麦飯・うどん、デザート等が揃う、まさに旬のとろろ三昧。
その中の黒毛和牛のすき焼きは、少し味が濃すぎる割り下を使っていたが、どうやら若者向けに調理されたのだろうと思われた。 でも、その口ざわりは言いようもなく絶妙で、後々まで口の中に残る不思議な味付けであった。
私は、ムカゴの素揚げは始めてだったし、麦とろろも(普段晩酌のときはご飯を食べない)久しぶりに全部平らげた。
最近、安値を売りにした大衆外食産業が盛んになっている一方、食材の産地や日本の伝統的な調理法にこだわった「いわゆる健康志向のこだわりの店」が増えてきた。
若者向けとシニア向けの二極化が今後も進むと思うが、日本古来の食文化を守り育てる意味からも、私はこだわりの店が健全に育つことを期待したい。