日本の2人以上の世帯における携帯電話の普及率は、総務省統計局によると約93%。携帯にまつわる事故もさぞ多いことだろう。
今日の午後、「原爆被害者の会」のホームページ更新作業を終えての帰り道、地下鉄のホームで電車を待つ間、携帯の受信メールを読み直していると「時間があたっらちょっとお願いがあるのですが・・・」と声をかけられた。
振り返ると後ろのベンチに大きな荷物を置いて、小さい子供をベビーカーに乗せたお母さんが、なにやら困った様子。
事情を聞くと、携帯が見あたらないので、(何処か荷物の中に紛れ込んでいるかも知れないので)、私の携帯で呼び出してみて欲しい、とのこと。
言われた番号で呼び出すが、反応が無い。
家に置き忘れたか、途中で何処かに置き忘れたのか、落ち着いて思い出してみてくださいと言葉を続けた。
駅までタクシーで来たので、多分その車の中に置き忘れたのでは・・・と心当たりありげで、 タクシーのレシートを頼りに私の携帯でタクシー会社に問い合わせられたが、見当たらないと返事。
今から博多駅で待ち合わせ予定だけど、相手と連絡が取れなくなって困ったと言いながら、それより個人情報が心配と切羽詰った様子。
私も似たような経験があるので何とかしてあげたいが、とっさに妙案が浮かばない。
そうこうするうち、私が乗る電車が来たが放置することも出来ず、やり過ごしてもう一度その方の携帯に電話する。
やはり反応が無い・・・そうこうしているうち、私の携帯に反応が・・・。
早速その方に電話を渡して聞いてもらう。
拾った人からである。
どうやらタクシーを降りたとき落としたらしい、とのこと。
その場所も分った瞬間、その安堵した表情が印象的であった。
私は、その親子が無事来福の目的が果たせるよう、祈りつつ見送った。
もし私が携帯を使っていなかったら、多分その方は私に声をかけなかったであろう。
また、私がその親子をそのままにして電車に乗ってしまったら、拾った人からの電話をそのお母さんに受け継ぐことが出来なかったに違いない。 先の電車を見送ったのが幸いした。
電車が来るまでの間の会話で分かったことだが、その方は福島原発による放射能被曝から子供を守るため、東京から福岡に移住しようかと思って下調べに来たとのこと。
被爆体験を語り継ぐボランティアの帰り道、被曝を逃れようと来福した人を助けることになった、不思議な出会いであった。