年をとると転び易くなる、と言えば転ぶのはお年寄りの専売特許みたいに聞えてしまう。
ところがさにあらず、足腰の筋力が弱ると年齢に関係なく転び易くなることに気付いていない人が案外多いのではないだろうか。
先週、日本健康太極拳協会福岡支部の研修会に参加した。
その中で森山善彦先生の講演「スポーツ医・科学から見た太極拳」は、日頃太極拳をしている私には大変興味深い内容であった。
先生の話を要約すると、
転んでしまうのは、片足が引っかかり体のバランスが崩れたとき、自分の体重を支えるだけの筋力が足りず、もう一方の足が出る前に体が崩れてしまう現象である・・・と。
その転び方にも年齢差や筋力の差によって特徴があるという。
70歳前後の高齢者が転ぶと、手首や肩を怪我する人が多いそうだ。それは転んだ瞬間無意識に手で自分の体をかばうためだという(足は出ないが手は出る)。 ところが、更に高齢になると顔・大たい骨の骨折が多くなる。それは転んだ瞬間、もんどりを打って倒れてしまうからだという(手も足も出ない)。
「年を重ねるにつれ足腰が弱くなり転び易くなる」という現象は、ごく自然の成り行きとして理解できるが、
問題は「何故足腰の筋力がが弱くなるか」、年だから仕方ないことなのだろうかという疑問に、先生は
「使わないから、使えなくなる」と断言される。
特に足の筋力は、使わないとどんどん弱ってしまい、あげくの果てには使えなくなってしまう性質のもので、年齢に関係なく起こりうる現象だという。
使わないから弱る→弱いから使おうとしない→益々弱くなる
→終には使えなくなる→、こうなると悪循環の繰り返しになってしまう。
「転び易いのは年のせいだ」と考えがちだが、あながちそうではないことが分かってくる。
人間は立っているとき、自分の体重を足で支えている。
両足で立っているときは自分の体重を両足で支えるが、歩いている時は片足で自分の体重を支えている。 歩いているとき片足にかかる負担は体重の1~2割増し、早足歩きでは更に重い力がかかる。 軽く走る時は体重の2倍、懸命に思いっきり走ると体重の3倍・・・と言う具合に、大きな重さが足にかかることになる。
それ程の重さを支えるのは筋力だから、常に足腰の筋力を養っていなければならないのだ。
幼稚園や小学校の運動会で、お父さん達が一生懸命に走っているとき、突然もんどりを打って転ぶことがよくある。早く走りたい気持が先立つが、自分の体重を支える筋力が弱ってしまい、後ろ足が出るまでの間、前足で自分の体重を支えきれなくなってしまうのである。
ごく当たり前のことだが、
「筋肉は使わなければ、使えなくなる」 、というのが先生の結論のようであった。
更に呼吸法を伴う運動と笑顔を日常生活に取り入れることが体の免疫力をを高めることにつながる、という内容を詳しく聞くことが出来、今後太極拳を続けるうえで大変意義深い話であった。