間もなく69回目の、8月6日広島・9日長崎の原爆忌、そして8月15日がやってくる。
先日、早乙女勝元氏の講演「戦争も原発も二度とくり返すまじ」の締めくくりに、
永井 隆著「いとし子よ」 の一節が紹介された。
私は今、戦争・原爆の悲惨さを語り継ぎ平和の尊さを学ぶ語り部として、小学校で戦争・被爆体験を話しているが、 語り終えた後、果たして自分の悲惨な体験談が、生徒の心に響いただろうか・・・と、いつも反省している。
そうした中、 永井 隆の「いとし子よ」(昭和23年10月発行)の一節をあらためて読んだ。
そして考えた。 「自分はこれほどの覚悟が出来ていただろうか、これほど自信をもって生徒に『戦争を繰り返してはいけない』と訴えているだろうか」と。
永井隆は、病床にありながら(昭和26年、43才没)、今の日本を見通していたのかもしれない。
私はその一節を、自分自身への教訓として心に止めておきたいと思い、敢えてここに書き写しておくことにする。
左の写真は、永井隆がこの世を去るまでの3年間を過ごした「如己堂」
この如己堂で書いた「いとし子よ」の「鳩と狼」の一節に、憲法9条に触れ、次のように書いている。
『私達日本国民は、憲法において戦争をしないことに決めた。憲法の第九条は、「日本国民は、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」と決めている。どんなことがあっても戦争をしないというのである。(中略)
・・・これは善い憲法だから、実行せねばならぬ。
自分が実行するだけでなく、これを破ろうとする力を防がねばならぬ。
これこそ、戦争の惨禍に目覚めたほんとうの日本人の声なのだよ。
しかし理屈は何とでもつき、世論はどちらへでもなびくものだよ。
日本をめぐる国際情勢次第では、日本人の中から、憲法を改めて戦争放棄の条項を削れ、と叫ぶ声がでないともかぎらない。そしてその叫びが、いかにももっともらしい理屈をつけて、世論を日本再武装に引きつけるかもしれない。
そのときこそ、・・・誠一よ、カヤノよ、たとい最後の二人となっても、どんなののしりや暴力を受けても、きっぱり「戦争絶対反対」を叫び続け、叫び通しておくれ!
たとい卑怯者とさげすまれ、裏切り者とたたかれても、「戦争絶対反対」の叫びを守っておくれ!』 と。
まさに今の日本の姿を、66年前に見通していたことになる。
折りしも日本の政権は、「集団的自衛権行使」を憲法9条の解釈変更で強行し、日本の進む方向を大きく変えようとしている。
これを容認することは、
近い将来、国益を守るという大義の下、「自衛隊隊員ひいては自分の身の回りの者が、戦争に巻き込まれて、血を流すことがありうることを覚悟したこと」だと私は理解している。
戦争・原爆の悲惨さを経験したことがない世代が大勢を占める日本、日本がアメリカによって原爆の被害に遭ったことすら知らない、いや信じようとしない人が増えている今の日本。
日本は今、後戻り出来ない誤った方向へ進みかけていることに、大きな不安を隠せない。