筍採りと筍盗り [2007-06-22 ]

「犬も歩けば棒に当たる」
 知人の山とは言え、初めて入った山で泥棒とばったり出会ったら、どんな展開になるだろうか。

 先日、あるクラブ仲間4人(Nさん、Kさん、Fさんと私)で、Nさんの親戚の裏山へ「筍採り」に出かけた。
生憎、お目当ての方は留守であった。農繁期だから多分近くの田畑に出かけていたのだろう。
留守だけど、電話で話しているから大丈夫ですよ、採りましょう!
Nさんの言葉に促されて、竹山に入った。
時折小雨がぱらつく天気で、鬱蒼と茂った竹山は辺りが薄暗く、ひんやりした感じで静まり返っていた。

 辺りで数本の筍を採ったところで、「kさん、この皮を剥きながらここで待ってて!」と言い残して後の3人はどんどん山奥へ入り込んだ。
時々、パシッと枯れ枝を折る音が静けさを破る。
一人残されたKさん、山に入る前に、まむしと猪がいるかも?と話をしていたこともあって、だんだん心細くなってきたらしい。日頃は闊達なKさんも、まむしと猪が脳裏をかすめ、だんだん心細くなってきたようだ。“早く誰か戻ってきてー”と心の中で叫んでいたらしい?ことは、みんなが帰ってきたときの表情で察しがついた。
そんなKさんの恐怖の報酬とは無関係とばかりに、“案外採れなかったねー”と、やや不満げな会話が続く。

 ところがその直後、「めくら蛇におじず」を地で行くようなドラマが待っていた。
思ったより少なかった収穫を少し挽回しようと思い、私は男気を出して、少し山を下りたところで道路沿いの別の竹山へ入った。
するとそこに人の気配が、・・・
竹や雑木をすかしてよく見ると、40mくらい先に作業服を着て手には大きな袋をぶら下げた、長靴姿の農家のおじさん風の人が動き回っている。
どう見ても筍を探している格好だ。
私は、「流石に農家の人は違うなー、まむしや害虫から身を守るために、長袖・長靴に帽子のいでたちが完璧だ」と感心しながら、きちんと挨拶をしなくては失礼になると思い、遠くから「こんにちは!」と声をかけた。
急に近づいて相手を驚かせてはいけないと思ったからだ。

・・・・・・、反応がない。
不気味な沈黙が漂う。
時折、カサカサと歩き回る音が返ってくるだけだ。
ひょっとすると耳が遠いのかも?と思ってもう一度大きな声で「こんにちは」と声を4かけるが、無視されてしまった。

このまま立ち去ってしまっては、失礼になるばかりか案内してくれたNさんに悪いと思い、「あのーNさんと一緒に筍をいただきに参りました」と、馬鹿丁寧と思われるほど、丁重に挨拶をした。
「筍トリね」と一言。
やっと反応があった。
挨拶が出来たよかったと思った。

でもその男は、こちらを見ようともしない。むしろ顔を背けるような格好である。
黙って山に入ったので、機嫌が悪いのではないかと思い、もうちょっと近づいてフェイスtoフェイスで挨拶をして、機嫌を直してもらおうと思いどんどん近づく。
すると、なんと私を避けるように、私が近づいた分相手は先へ行ってしまう。
何故だ??・・・・
お人よしの私は「ひょっとしてはにかみやさんかな?」と思ったりしながらも、一応挨拶したんだからいいだろうと思い、私は筍採りをはじめた。

 その頃、一足遅れてNサン達が近づいてきたので、「Nさ~ん、ここのご主人がいらっしゃいますよ」と大きな声で伝えた。
「あーそうですか。帰ってきたのかな?」とNさんの返事。
ことの成り行きをNさんに伝えることが出来て、一案心と思ったそのときである、
その男が急に山から道路のほうに下りて行った。
なんと、そこには車が止まっていた。
それを追うようにNさんがその男に近づく。
するとその男はNさんの方を振り返るどころか、あわてて車を走らせて逃げていってしまった。
そこで初めて気がついた。筍盗りだったのだ!

 もう少し私が近寄って、筍盗りと顔を合わせていたら、どんな出会いになっただろうか。
太刀ならぬ筍を振り回した立ち回りにになっただろうか?
幻のまむしや猪と違って、本物の恐怖の報酬になりかねない一こまであった。
 盗りを採りと、とんだとり違いをしたものだ。!
by matutaka31 | 2007-06-22 12:09 | 思いのまま | Trackback | Comments(0)
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