私の家庭菜園は、およそ80坪。
何故およそなのか、それは借地で、何も厳密に面積を意識する必要がないからだ。
私は、暇さえあれば1時間でも2時間でも、時には半日、自転車でその菜園に出かける。
その菜園は、日にもよるが、菜園仲間のおじさん達、通りすがりの知人、面識のない行きずりの人、そして隣接の住人等々、私にとって大切なお客さん達と世間話に花が咲く、椅子もテーブルもお茶もない、にわか社交場なのだ。
話しかけてくるお客さんの挨拶にも色々ある。
“お~今日は何事ね”、と隣の菜園仲間。
“どげなふうですな?”(どんな具合ですか)と、菜園愛好家のおばあちゃん。
“やーこんにちは”と、通りかかった知人。
“これは何ですか?”“今何をしているんですか?”と、通りすがりの人。
大体、このようなパターンで会話が始まる。
このような、くだけた挨拶から始まる時は、大体話が長くなる。
作業に油が乗っているときなど、今一寸作業をしいんだけれどねー、と言いたくなるときもあるが、大切なお客さんのことだから、“やーこんにちは”と挨拶を返している瞬間、もうすっかり対話ムードにシフトしてしまう。
菜園の仕事は何時でも出来ることだし、それより、この人との今の出会いは2度とないのだから、そう思うと作業はどうでもよくなってしまう。
話に弾みがつくと、ところかまわず腰を下ろし、2~30分位あっという間に過ぎてしまうこともある。
時には、入れ替わり立ち代りお客さんがおいでになり、畑仕事にきたのか、世間話をしにきたのか分からなくなることもある。
でも、心が通い合う会話は、心が和み、時間の経つのを忘れさせる。
時には意外な情報を耳にすることもある。
いろんな経験をした人たちだから、夫々に説得力もあり、興味もわく。
このようにいろんな人と屈託のない会話が弾む我が菜園は、私にとって、心が和むオアシスである。
「松ちゃんの菜園記」をご笑覧いただければ幸いです。