先日、「オールウエイズ 続 3丁目の夕陽」を観た。
ストーリーに興味があった訳ではないが、昭和30年代初めの頃東京で学生生活を送った私にとって、当時の社会風潮が懐かしく思えたからだ。
戦後の疲弊した社会から、高度経済成長へと歩みだした頃の、懸命に生きるある街角の人生模様の物語である。

そこには、貧しくとも、みんなで助け合う温かい微笑ましい人間社会があった。また、正直に活きる人々の正義感と良心があった。
当時の生活環境が次々に繰り広げられていく。
小型のオート三輪車、手回しの電気洗濯機、手動チャンネル切り替えのテレビ、それにコッペパン、九州では珍しい豚肉のすき焼き等々、当時を思い出すに十分なものが次々に目の前に現れ、つい当時にタイムスリップしたような錯覚を覚えてしまった。
観ているうちに、映画に出てくるような薄汚い町工場(まちこうば)に学生アルバイトで働いたことを想い出した。東芝の部品組み立ての下請け工場だったように記憶している。日給は240(当時ニコヨンといった)~300円、それでも温かい雰囲気に包まれ、みんな懸命に働いていた。何処へ行っても暖かく迎え入れてもらったことが、つい先日の出来事のように懐かしく想い出された。
人には夫々充実した人生の生き方があることを、「夕陽の先には、明るい明日(あした)がある」ことに託して、爽やかに締めくくった心が温まる映画であった。
今時、このような雰囲気を味わえる社会があるのだろうか。
少なくとも、私の住まいの周りには、みんなで助け合う温かい触れ合いを感じさせるものは無くなってしまっているように思えてならない。
寂しいことだ。